兵庫を斜めに突っ切る最短ルート。そこはアップダウンの連続。無事に目的地までたどり着けるのか。
天空の城
6:00 兵庫県の道の駅村岡ファームガーデンで起床。昨夜は最高の星空が見られたので気分がいい。
今日はまず国道9号線で竹田城跡をめざす。城跡がある朝来市までは約40㎞だ。暗がりの中ゆっくりスタート。
大阪までは兵庫県を斜めに進む最短のルートを選んだ。しかしそれは山道をひたすら進むことを意味する。最初の目的地の竹田城跡までは上り600m、下り500m。40㎞の距離でこのアップダウンは結構きつい。
坂道も大きな問題だがもう一つやっかいなことが。スマホの充電が残り少ないのだ。節約しながら進んでいく。
最初の関門は道の駅ハチ北あたりの峠だ。この辺りは関西では有名なハチ北高原スキー場がある山岳地帯。まさかここに自転車で来ることになるとは。
道の駅で休んでいると、バイクで来た方に話しかけられた。その人は言う。
「若いときはどうしても、がっと力が入ってしまうが気楽に。」
たしかに。若いうちにあれをしないと、これをしないとと思いすぎると空回りするし体調も壊す。ここで気合を入れすぎて事故してしまっては今までの努力が無駄になる。朝一のこのおっちゃんの一言が響いた。今日も最後まで安全に。

8:30 道の駅ようか丹波蔵というところで姫路から来たバイクの方に出会った。この人は言う。
「若いときは遊ばなあかん!したいことせな!」
昔はよく原付で鳥取まで行ったそうだ。体は生身で病気になる。特に多いのはがん。自分は明日がんになるかもしれない。だから今は時間がもったいないと思って、休日はとにかく外に出るようにしているそう。二連続でおっちゃんからいい話が聞けた。

10:00 本日最初の山道を攻略。竹田城跡近くまでやってきた。いくつものアーチでできた橋が見える。

橋を越えると看板が見えてきた。城跡まではまだ3.2㎞もあるらしい。もちろん上り坂。

建物のそばにベンチがあったのでお借りした。遅めの朝ごはんで呼吸を整える。
自転車を押して坂を登り始める。すぐ隣を何台もの車が軽快に通り過ぎていく。息を荒らしながらひたすら山道を登った。

11:30 竹田城跡に到着。今度は徒歩で石垣を駆け上がる。
城跡なので建物がどーんとたっているわけではないが、早朝の雲海に浮かぶ姿が有名で「天空の城」と称される。また、全体像が虎が臥しているようにも見えることから別名「虎臥城」とも言われるそうだ。

ちなみに雲海に浮かぶ姿はこんな感じ。学生の頃、友人とこれを見るために竹田城に登ったことを思い出した。石垣を登っている時に気がついた。「あれ、竹田城自体に登ってしまったらあの景色は見られないんじゃ…」懐かしい(笑)

石垣を登る途中にウォーキングしている方々とあいさつした。広場で再び出会い記念写真。旅についてたくさん質問してくれた。疲れた体が人と話すたび元気を取り戻す。

「後ろ姿撮っていいですか?」
日本語でそう話しかけてくれたのは台湾人の方。日本一周Tシャツがよほど気に入ったらしく何枚も写真を撮ってくれた。
長生き
13:00 竹田城跡を出発。今度は約60㎞先の丹波篠山市をめざす。上り500m、下り650mの山道が待っている。

国道427号線で丹波市方面へ進む。予想通りの山道。軽いギアがどんどん奪われていく。

ハァ、ハァ、アァ、ヴー、ヴェー。
出発して30分。かなりきつい坂が現れた。上っても上っても頂上に着かない。汗だくになりながらペダルをこぐ。
遠阪峠という場所でご覧の通り道はぐねぐね。自転車を押しては休み、また押した。日本一周中こんな峠を一体いくつ越えてきただろうか。休むたびにこれまで走ってきたきつい峠のことを思い出した。
日本一周6日目、まだ四国を回っていた時だ。日本一周をするかもまだはっきり決めていなかった頃、高知で上った七子峠。初めての野宿に失敗し真夜中に必死に走ったのを覚えている。
72日目の北海道は知床峠。雨で身の回りの物がほぼすべて水没し、やけくそに上った記憶がある。
あれを思ったらこんな峠なんて!
体が少し軽くなったような気がした。ある旅人が言っていた。
上った分、下るんですよ^^
本当にその通り。頑張った分が同じだけ返ってくる。過去の自分や出会った人に勇気づけられながら、坂道を上った。
18:30 ようやく丹波篠山市に入った。ここまで60㎞は車からの声援はいただいたものの終始孤独な闘い。体の疲れはピークに近い。とぼとぼと畑の横の道を走っていた時、一人のおばあちゃんに出会った。

自転車を降りてここまでの経緯を説明する。最後におばあちゃんが大切にしている言葉を聞いてみた。すると、
「長生き!」
と答えてくれた。食べてよく寝てここまで元気に過ごされてきたそうだ。お年は聞き忘れたが元気なおばあちゃんだ。

Tシャツにも力強いメッセージを書いてくださった。今日までいくつもの峠を越えて、このおばあちゃんに出会えた。すべてつながっている。なんておもしろいんや^^

さて、市内の公園で野宿できそうなところを探す。があまりいいところが見つからない。
そこでさらに30㎞先の新三田市へ向かうことに。今日進めば進むほど、明日が楽になる。最後の力をふり絞る。

20:30 新三田でも公園探しに苦戦したが、ようやく落ち着ける場所を見つけた。隣には関西学院大学のキャンパスがあるが、今の時間は人通りがほとんどない。近くのコンビニで晩飯を買って食べた。
鳥取市内を出てから2日でここまで来られた。ゴールまではもう100㎞もない。そして明日は日曜日。旅を終えるにはちょうど良さそうだ。
新三田市までのルート
2023年6月17日【281日目】
香美町→新三田市
走行距離 129.4㎞
積算距離 14,365.9㎞

この日の獲得標高は1500m!なかなかハードで写真もあまり撮れずでしたが、かなり大阪に近づけました。さあ、いよいよ明日ゴールしますよ^^お楽しみに!

