喫茶ミラクルで目覚める朝。今日も奇跡のような出会いが続きます。
人生は旅でしょう?

8:00 お世話になった喫茶ミラクルのオーナーさん、スタッフの方とお別れ。またどこかで会いましょう!

有名な温泉地である浜村。辺りを散策しているとヤサホーパークという大きな公園の中に足湯を見つけた。

なぜかモアイに見られながらの足湯。いいお湯でした^^
ミラクルのオーナーさんがおいしいモーニングがある喫茶店を教えてくれたので行ってみる。

喫茶店の名前は旅人。これは来るべくして来たな。

ふわふわ厚みのあるトーストに目玉焼き、そしてコーヒー。これ以上の朝食があろうか。
こちらのオーナーであるお母さんはなんと自分と同じ町で育った方だった。これは運命。なぜ「旅人」という名前なのか聞くとお母さんはこう答えた。
「人生は旅でしょう?」
一気に目が覚めた。この言葉はカフェインより効く。

別れ際に日本一周Tシャツにサインをいただいた。差し入れにバナナも持たせてくれた。バナナに勝るほどすぐにパワーが出るものはない。さすがお母さん。旅人のことをわかっていらっしゃる。

昨日ミラクルのオーナーさんに窮地を救っていただいたコンビニ。前日の出来事だが、数日この街に滞在したかのような時間の流れだ。
因幡の白うさぎ
今日は鳥取市内中心部を回り鳥取砂丘へ向かう。

山陰旅で慣れ親しんだ9号線へ合流。鳥取市中心部までは残り20㎞を切っている。
アップダウンのある道を終えるとキラキラする海が見えてきた。看板には「白兎海岸」とある。気になるな。

10:20 白兎(はくと)海岸と書かれた場所に到着。神話の地とあるが、ここは因幡の白うさぎ伝説が宿るところだ。

海を眺めてみる。きれいな海と砂浜が広がっている。あまり時間はないので水遊びはまた今度。

海に向かうようにきれいな道の駅が建っている。

その隣には砂像があった。因幡の白うさぎ伝説のひと場面を表しているようだ。そういえば鳥取砂丘にも砂像のミュージアムがあったような。

砂像がある場所から奥へ進むと参道がある。

こちらは白兎神社。白兎の神様が祀られている。
そもそも「因幡の白うさぎ」とは古事記に出てくるうさぎの話で、医療発祥や日本最古の恋物語として知られる。話の中で傷ついたうさぎを助けるのが先日訪れた出雲大社に祀られる神様「大国主命(おおくにぬしのみこと)」だ。

本殿を支える柱を見てみると、丸い石の上に建っていた。柱の周りにはたくさんのお賽銭が。

柱を支える石の表面に彫刻が施されているのがわかる。上から見ると菊の紋章になっているらしい。これは何らかの歴史を感じさせる造りだ。

ふと空を見上げると雲の左下の辺りがおもしろい形をしていた。
まるで出雲市とその東にある宍道湖を表しているかのよう。ちょっと妄想が過ぎたか(笑)
ふるさとが響き渡る公園で

11:50 無事鳥取市の街中へ入場。洗濯のため快活にピットインした。
すると旅の装備をした自転車に遭遇。たまたま持ち主の方と話すことができた。休日を利用して自転車旅をしている方だった。鳥取から兵庫への道で気をつけるポイントを教えてもらえた。

快活を出て出発の準備をしていると、今度は地元のおばちゃんに話しかけられた。これまでの旅の話を聞いてくれて、ご自身が好きなベリーグッドマンの話をしてくれた。

14:50 鳥取駅へ移動。

駅前に大きなモニュメントを見つけた。

これ、どうやら砂でできているよう。さすが砂丘で有名な鳥取県。

駅から北東に少し進んだところに鳥取城跡がある。手前は公園で奥が城跡だ。

まず見えてきたのはこちらの建物。入口の門を通り中に入ってみる。

この建物は仁風閣。築100年以上がたつ立派な洋館だ。ところどころ白のペンキがはがれているところがあるが、より歴史を感じさせる。※2023年12月から5年間修理工事のため閉館中

仁風閣の左手に見える石垣が鳥取城跡。江戸時代には立派な建物がたっていたが、明治維新後に大半が取り壊されてしまったらしい。

仁風閣の裏手に回ってみた。きれいな芝生の上に洋風のいすとテーブルがある。

きれいな日本庭園もあった。ここは宝隆院庭園と呼ばれる江戸時代後期に造られた庭園。奥に見えるのは宝扇院という建物で、鳥取城の一部として唯一残る施設。150年以上も現存していることになるが、そのことを知らなかった私は遠めに写真を撮るだけで終わってしまった(笑)

15:30 鳥取城跡の入口付近へ戻った。公園の前には「ふるさと」と書かれた看板と石碑が。

この名曲の作者である岡野貞一(ていいち)は鳥取市出身。63年の生涯で日本以外にも台湾や朝鮮の学校の校歌も作曲したそうだ。

看板の横ではさまざまな有名歌手が歌ったふるさとが聞けるようになっていた。ボタンをいくつか押してみる。すると…
うさぎおいし かのやま こぶなつりし かのかわ~
あたりにふるさとの歌声が響き渡った。ここは自分が育った町ではないが、一気に懐かしむ感情がこみあげてくる。目をつむり夢中になって聞く。
すると遠くから子どもの声がしてきた。学校帰りの小学生たちだ。自転車の前で立ち止まり旅の話を興味津々で聞いてくれた。日本一周Tシャツにメッセージも書いてくれた。

続いて話しかけてくれたのは地元のおじいちゃん。トレッキングポールを持ち散歩に来ている最中のよう。昔は剣道の達人だったそうで業界では知らない人はいないという。おじいちゃんは目が合うたび
感心、感心^^
と言って褒めてくれた。いい話を聞かせてもらった。
鳥取城跡を離れる前に公園のトイレに行こうとした時、ベンチに座っているおじいちゃんとも話をした。「おはなしきくたび」の看板を見て声をかけてくれたようだ。話を少ししてお別れ。しかしもう一度写真を撮るために戻ると、話を続けてくれた。年は今年で93歳。最初は旅の話や最近の出来事について話していたが、これまでの人生について聞いたときに少し表情を変え若いころの戦争体験について聞かせてくれた。
戦争時は広島の呉にある軍事工場で働いていて、船の特攻機「震洋」を作っていた。空襲によって仲間が大勢亡くなり、目の前で仲間の体が吹き飛んだこともあった。当時呉に停泊していた「戦艦大和」もこの目で見た。大和の甲板は建物の4階くらいの高さで驚いたそうだ。
特攻隊が飛び立っていくときは…

おじいちゃんは空を指さしながら涙を流し始めた。特攻隊に向かって思いっきり帽子を振ったそうだ。
あれを思い出すとやっぱり涙が出る。戦争を知っていると戦争は本当にダメだ。
涙をぬぐいながら話を続けてくれた。おじいちゃんの話を正面で聞きたかったので地べたに座って最後まで聞いた。ここまで真剣に自身のつらい経験を話してくださった人は旅中そう何人もいない。おじいちゃんは最後にこう言ってくれた。
聞いてくれてありがとうな。
すうっと心が軽くなった。
おじいちゃんが貴重な話を聞かせてくれて嬉しかったと同時に、自分がやってきたことが報われた気がした。旅に出て280日目。ここまで頑張って走ってきて本当によかった。すべてこの出会いにつながっていたのだ。

出会えた記念に写真を撮った。どうかいつまでもお元気で。また会いましょう!
他にも毎日鳥取城の頂上まで散歩する方や学校帰りの高校生たちとも話した。山陰旅では一番よく人に出会ったところかもしれない。
公園を離れる前にふるさとをもう一度聞いた。特別な場所がまた一つ増えた。
鳥取砂丘

おじいちゃんと別れ鳥取砂丘へ急ぐ。あんまり時間はないが見ておきたい。

16:45 砂丘の前に到着。サンドのバスが出迎えてくれた。

おお!このリフト懐かしい。
実は鳥取砂丘を訪れるのはこれで3度目。新鮮味はないが少し興奮する。

来た来たー!
学生の時に初めて来たときは、あの丘を越えて海の近くまで走っていったもんだが…。滞在時間はわずか5分。満足して駐輪場へ。

自転車にまたがろうとしているとかっこいいスポーツ車に乗ったおじさんが現れた。お話を聞いてみると47都道府県を制覇し五大陸も旅した経験のあるすごい方だった。つまり旅の大先輩。全国に124ある歴史的街並みは122か所も訪れたそうだ。いやあ、見た目も中身もかっこいい^^
御殿と星空
さてここから国道178号線を行けば、兵庫北部の豊岡市や京都に入れる。ただゴールの大阪までは遠回りとなる。9号線で内陸を進めば兵庫を斜めに突っ切り最短で大阪へ戻ることが可能だ。

どちらにしても山道はありそうだが私が選んだのは9号線。理由はいくつかあるが、一番は体力と自転車の限界。
日本一周後半は予算の都合上どうして野宿が増えてしまった。それもテントを使わずにベンチで寝るスタイルだ。なかなか寝付けない日も多く、起きると必ず体のどこかが痛む。自転車は広島で大修理してもらった際には「あと3000㎞」と言われていた。それがすでに4500㎞も走っている。特に後輪のがたつきがひどく、常に気にしながらの走行になっている。
せっかくここまで来たから最後までコイツと…。
ゴールまで残り少し、愛車と一緒に走り切りたい。そう思っていた。道は決まりだ。

9号線は内陸へ徐々に曲がっていく。離れていく日本海に別れを告げる。

18:30 日が暮れ始めた。長い山道はこれから。さあて、今日の寝床はどこだろう。

大きく曲がる道で振り返ると夕日が。今日もきれいだ。

坂道を上ってトンネルへ。かろうじて歩道があるので使わせてもらおう。
21:00 きつい山道を終え、村岡という町の橋の上で呼吸を整えているときだった。イルミネーションがキラキラと光る建物を見つけた。

表に回ってみる。御殿寿しと書いてある。山奥でこんな時間帯に出会うとは。運命を感じて入ってみた。

海鮮丼が有名らしいので注文。現れたのは新鮮な魚がたくさんのった豪華な海鮮丼だ。
隣のついたての向こうには会社員の方たちがいる。仕事の愚痴をこぼしながらにぎやかに食べていた。いつもならそうしたいわゆる社会人と呼ばれる方たちと自分を比べているところ。ただこの時は気にならなかった。自分は今日一日どれだけ貴重な出会いをしたことか。

レジで女将さんと話していると奥から大将も出てきた。「寿司持っていき!」と差し入れをくださった。
ありがとうございます!
少しこみあげてくるものがあったがこらえた。店を出て自転車にまたがる。
寿司屋から15分程進んだ先に道の駅があった。ベンチをお借りし先ほどいただいた差し入れをほおばる。涙があふれ出た。ここまでの道のりが険しかったのは確かだが、それ以上に人のやさしさに感動した。

ベンチの上に寝袋を敷き仰向けになった。すると視界いっぱいに星空が見えた。
ここは兵庫県の山の中。星の数が特別多いわけでもない。ただすごくすごくきれいに見えた。
過去一やな。
いろんな場所で野宿させてもらったが、こんなに感動した夜はない。疲れているはずがいつまでもまぶたが閉じなかった。
今日は寝やんでええか…。
道の駅で静かに、星空を独り占めに、最高の夜だ。
兵庫県香美町までのルート
2023年6月16日【280日目】
鳥取市→兵庫県香美町
走行距離 93.5㎞
積算距離 14,236.5㎞

いつの間にか兵庫県に入場。出会いにあふれた一日でした。この日の野宿で見た星空は本当に忘れられません。次回も楽しみに!

