邪気
道の駅フェニックスで起床。
目をこすりながら体を起こす。すると道路側におばちゃんがポツンと立っていた。
ひぇ!
少しびっくりする。とうとう見えてしまったのか。するとおばちゃんは
「よく眠れましたか?」
と言って駐車場の方へ消えていった。やっぱり見えてしまったみたい(笑)
靴を履いて数歩歩いたところで違和感を感じた。
なんか入ってる。
靴を脱いで振ってみる。すると
ひぇ!
早くも本日2回目のひぇ。小さなクモがいた。いつから入っていたのか。不死鳥のフェニックスで寝させてもらえたが、死なない代わりに恐怖体験が続く(笑)
道の駅の入口は閉まっている。オープン前に起きられたようだ。トイレに入ろうとするとベンチにごみが散乱していた。一つや二つではなかったのでさすがに気になる。ビニール袋を取りに行きごみを集めた。日頃から良い行いを、というよりはとりついた邪気を払いたい。
一つ目の目的地
今日の目的地は3つある。このまま海沿いを進んだ先にあるサンメッセ日南、鵜戸神宮、そして都井(とい)岬だ。荷物を積み込みさっそく道の駅を出発する。
途中コンビニで朝ごはんを選ぶ。レジに持っていくと、店員さんが日本一周Tシャツに気づいてくれた。するとその方は
「頑張ってね!」
と言って自身のカードで会計を済ませてくれた。本来はよくないことなのかもしれない。ただコンビニでこんな店員さんに出会ったのは初めてでうれしかった。
途中長いトンネルがあったので避けようと海沿いの道を進んだ。歩道がない場合、トンネルの走行は危険を伴う。ところがかなり進んだところで無情にも「通行止」の文字が。工事中か土砂崩れか、とにかく来た道を戻ることにした。
結果的にトンネルには歩道があったので安全に進めた。
10:20 最初の目的地サンメッセ日南に到着。
ここにはなんとモアイ像があるらしい。チケットを買って入場。料金は1000円だった。
お!見えてきた!
こちらがサンメッセ日南にある7体のモアイ像。南米チリの沖合約3800㎞に位置するラパ・ヌイ(イースター島)の公認で世界で唯一作ることを許されたそうだ。
さすが、なかなかの大きさ。同じ方向を向いて堂々と立つ姿は圧巻だ。
モアイ像の向かい側には各国にある主な世界遺産のパネルが並ぶ。
チリのラパ・ヌイも世界遺産に登録されている。日本ではイースター島という名前が浸透しているが、正式な登録名は現地語の「ラパ・ヌイ国立公園」だ。
争いや災害によって倒れていたモアイ像を、日本の企業が修復したことが登録の手助けになった。その企業はサンメッセ日南があるこの地にゆかりがあり、1996年にモアイ像を復刻したそうだ。すごい物語やな。
丘の上から見たモアイ像。ラパ・ヌイでもこうした海岸沿いに立つモアイ像が多く見られる。海を背にして立つ光景はとても似ていて、モアイ像復刻にはふさわしい場所のように感じる。
これは地球感謝の鐘。奥に「サヌカイト」という、穏やかで澄んだ音のする自然石の鐘がある。
その周りの石柱には、世界各国の著名な宗教関係者や教団の方のメッセージが刻まれていた。
園内は坂や階段が多いが、くつろげる場所も多くあった。有料で5人乗りのカートも借りることができ、ゆっくり回ることができる。
帰り際にガチャガチャをした。せっかく来たのでモアイ像のピンバッジがほしかったのだ。
結果はこの通り。まさかの行ってない高千穂が出た。
鵜戸神宮
他の旅人が訪れていて、行ってみたかった場所がもう一つ。
サンメッセ日南のすぐ近くにある鵜戸神宮だ。
この神社はすごいところに建てられているという噂を聞く。こちらの二の鳥居を通って中へ。
岩の底に向かって階段を降りていく。きれいな朱色の手すりが岩肌に沿って続く光景は、全国でも見たことがない。
階段を降りてすぐ左の空間にあるのが鵜戸神宮の御本殿。岩の空洞の中におさまるように建てられている。
配色や装飾が昨日の青島神社と少し似ているが、また特別な感じに見える。
本殿の前の景色はこんな感じ。険しい地形に岩がゴロゴロ。
5個200円の運玉を男性は右手で投げる。亀石の上の丸い縄の中に入れば願い事が叶うそうだ。ちなみに私の結果は…。うーんまた次回!(笑)
異種連係プレー
鵜戸神宮を後にし国道を走っていると、「天むす」と書かれた看板が見えた。お客さんも多くいたのでこれはきっと名店。少し並んで購入。値段は5個で500円。なんと良心的な!
店の前であっという間にたいらげた。
日南市の街中に広場を見つけた。少し休憩していると、さっきの天むすで胃袋が開いたのか再びお腹が空いてきた。
近くのスーパーで食料を購入。今日の旅はまだまだ続く。蓄えておかなければ。前に猫が来たのでパンとカステラは後ろにおいて、カツ丼だけ食べた。
貴重な食料、渡すものか!
富士山のキャンプ場では猫に特上肉を取られた思い出がある。同じ失敗は繰り返すまい。
その時だった。
バサッ!!!
背中に何かが舞い降りてきたような感覚。振り返るとさっきまで置いていたカステラがない。
え?なんで?
周りにいるのは目の前の猫1匹。すると頭上で鳴き声がした。でかい鳥の足に黄色いものが。
カステラぁああああ!!
この時ばかりはマジで叫んで追いかけた。だが無情にも鳥は少し離れたレストランの看板の上に降り立った。
あそこが巣か。どうやって上るんや。
食べ物を失った恨みはでかい。興奮状態で追いかけていたが一旦冷静になる。敵は前にいた猫だけだと思っていた。異種の見事な連係プレー。後で‟お魚わいろ”でももらっているのか。
悔しいが荷物をまとめ先に進むことにした。
岬に住む馬
国道220号線は途中から二つに分かれた。海沿いの448号線へと路線チェンジ。このまま南下すれば、3つ目の目的地都井(とい)岬に着くはずだ。
15:10 道の駅なんごうでトイレ休憩。果たして間に合うかどうか。
岬はあの山の向こう。ぎょえ~。
ここからは結構なアップダウンが続きそう。
きつい…。
坂の途中でちょっと休憩。
山の中は傾斜がもっときつかった。激坂は自転車のチェーンに負担をかけないよう押して進む。
あかん、とおい!これじゃ遠い岬やんけ!(笑)
九州で間違いなく一番きつい道。汗をぬぐいながらひたすらペダルを踏む。
17:00 ようやく都井岬に到着。閉門まで残り30分だった。あぶねえ。
入場料400円を支払い奥に進む。岬の丘に登ってみると…
馬や!
本当にいた。丘の斜面は急だが、軽快に歩いて草を食べている。
かわいい。ここの馬は競走馬と比べるとサイズは小さい。岬馬と呼ばれるそうだ。
ここでは300年以上にわたって岬馬が放牧されてきた。繁殖は完全に自然任せで、この過酷な環境で生き抜いてきた言わば野生の馬である。
野生なのでエサは与えてもらえない。この地で生きるのは結構大変で、寿命は牧場で管理された馬よりも短いそうだ。野生だからか、馬の目はとても澄んで見えた。
岬にこれだけ自然な状態で馬が生息しているのは、全国でもここだけだろう。
近くにいた観光客の方に写真を撮ってもらった。馬の視野は広く、後ろの足元まで見えるそうなので、近づきすぎるのはNG。
帰りのゲートを通るとき、受付の方と旅話をした。自転車で来たことに少しびっくりしていたが、たまにそういう方もいるそうだ。お土産にステッカーをくださった。
さすがにこのあたりで野宿するわけにもいかず、岬を折り返して串間市中心部をめざすことにした。
途中こちらで温泉に浸かる。今日は他にもサイクリストが大勢。
最終的に道の駅くしまに到着。寝床にできそうなベンチを探すと
うん、ここが良さそう。夜食を食べていると、とあるお姉さんに話しかけられた。北海道の礼文島にあるユースホステルで働いたことがあり、さらにヒッチハイクで出会った方と結婚されたそうだ。一日の終わりにめちゃくちゃおもしろい話を聞かせてもらえた。
串間市までのルート
2023年3月24日【207日目】
宮崎市→串間市
走行距離 100.1㎞
積算距離 10,807.7㎞
今日の日記は少し長くなってしまいましたが、読んでくださりありがとうございます。次回鹿児島入ります。お楽しみに!