河川敷で獣の気配にうなされること数時間。無事穏やかな朝は迎えられたのか。釣りをしていると、すてきな子どもとの出会いが。新潟ラストデイの始まりです。
穏やかな朝
小鳥の声が聞こえる。テント周りが明るい。
ふぅ、朝だ。
ゆっくり寝袋から体を出し、テントの周りを見渡す。獣たちの姿はなかった。
どうやら戦いに見事勝利したらしい。
本当に長い夢でも見ていた気分だ。
生きている、生きているぞ。
「獣ごときで」と笑われそうだが、ふとそんなことを思った。
村上駅にやってきた。なにやら雰囲気のある塔が建っている。
奥に見えるのは、村上大祭で使われる「おしゃぎり」と呼ばれる車輪だ。手前には名産の塩引き鮭がつるされている。なかなかおもしろい。
奇岩ロード
さて、今日は村上市から海沿いの国道345号線を通り山形県に入る。
国道345号線はJR羽越本線と並行して続いており、左側に日本海を見ながら走ることができる。
巨人がチョップして叩き割ったような岩だ。
今度はトンネル。このような岩をくりぬいたトンネルがいくつも続く。
海の方にもポツポツといろんな形の岩が。
ここめっちゃきれいやん!
太陽の光が差し、海面を照らす。あと15kmほどで山形県に入る。
イケメンカモメやなあ。
ん?あれは島か…?
なんか浮かんで見えるぞ!
やっぱり浮かんで見える!
粟島という小さな島らしい。不思議な現象だった。
海辺の休息
格安の温泉があるときいてやってきた。
ゆり花温泉。入浴料は350円だ。露天風呂まであって最高だった。
ゆり花温泉から出てすぐのところで、なにやらにぎやかな声が聞こえてきた。イベントをしているようだ。中では新鮮な魚や野菜、お総菜などが売られていた。
このさんぽく軽トラ市は5~10月の間、毎月1回開かれているそうだ。
軽トラ市からすぐの海沿いに海水浴場があった。こちらで休憩しよう。
軽トラ市で買った甘えびの唐揚げ。もはやおつまみ。このままお酒でも飲んで眠りにつこうか。
カモメたちも体を休めている。
人類にも休息は必要だ。マットをしいて寝ころぶ。大阪から新潟まで8日間。休息日を作らずにこぎ続けてきた。
たまにはこうして波の音を聞いて昼寝するのもいいじゃないか^^
堤防で出会ったご家族
秋田の文字が見えた!今日は山形の酒田市あたりまでは行けそうだ。
おーなんかきれいな山が見える。地図上で同じ方向にあるのは鳥海山だ。
あんな山があったのか。
日本一周に出るまでは山の名前なんてあまり知らなかったが、回ってみると各県の境にはだいたい山があることに気づく。鳥海山は山形県と秋田県にまたがる標高2,236mの活火山だ。
漁港を見つけたので釣りをすることにした。だがエサはない。コンビニで買ったよっちゃんイカでチャレンジや!今日の晩飯を釣り上げてみせましょう!
だが待てど待てど、魚は釣れない。それどころか当たりも来ない。
隣のご家族は数匹釣れているようだ。見に行ってみる。
とても親切な雰囲気のご家族。釣れた魚を見せてくださった。
今度は子どもが一人こちらのバケツを見に来た。
さっきのお兄ちゃん!
こんにちは。魚釣れたー?
うん、ぼく1ぴきつった。
すごいなあ。
子どもでも1匹釣れているのかと奥歯を噛みしめる。器の小さい男だ(笑)
その子は5歳で、魚よりどちらかというとカモメが好きな子だった。こちらに話しかけては後ろのカモメを追いかける。
なんて平和な時間なんや。
引き続きぼおっと竿を眺めていると、近くの岸に漁船が1隻到着した。
行ってみると、なんと大きなマグロが船に横づけされているではないか。そのマグロをクレーンでつりあげトラックに載せる。すごい。自分の身長と同じくらいの大きさだ。運転手のおばちゃんがマグロを見せてくれた。
クロマグロよ。
あなた大間まで行くの?大間のマグロと同じよ!
大間のマグロ…
ゴクン、つばを飲む。
このマグロはいったい何人のお腹を満たすのだろうか。
おーいかんいかん!釣りだ釣り!
結局2時間ほど粘ったが釣れなかった。
荷物を自転車に積み込み帰ろうとした時だった。
さっき話した子どもがお母さんと一緒にやってきた。子どもの手にはお菓子がある。
「たくさん話きいてもらったんで^^」
なんという展開だろう。なんだか泣きそうになった。
いただいたお菓子はおっとっと。心の中は大漁である。
おはなしきくたび鶴岡駅前
鶴岡駅に到着。
ここでもおもしろい出会いがあった。
駅前のベンチで自転車を止めて休憩。
駅前は人通りがある。ここに止めておいたら、誰かが気になって話しかけてくれるかもしれない。
そう思ったのだ。
看板をちらっと見ては去っていく人たち。
そんな中数人が話しかけてくれた。仕事終わりのおじさん、大学生、高校生などなど。
そろそろ次の場所へ。と立ち上がった時、身長の大きなお兄さんが話しかけてきた。
旅されてるんですね!よかったらお話きかせてください。
もう一度ベンチに座った。
仕事終わりのお兄さん。なんでも、今までにも旅人に出会ったことがあり、自宅に泊めたことがあるという。
今日泊まるところは決まってるんですか?もしよかったらうちすぐそこなんで泊まってくれてもいいですよ!
なんとありがたい。さっき会った旅人にそんなことを言ってくれる人が本当にいるなんて。正直感動した。がすぐに冷静になった。
うーん、いい人なんだろうが、いい人なんだろうが…。迷う。
このあたり安い宿はないと思いますよ!うちに来ませんか?
うーん、迷う。まだ旅に出てから人の家に泊まったのは、広島の写真スタジオのみだ。
この方と1:1で泊まる…なんとなく乗り気にはなれずお断りすることにした。
難しい。本当に親切心から言ってくれていたのかも…。
今日はこのあたりの公園で寝よう。
同じ装備の旅人
鶴岡駅からまっすぐ伸びた道をこいでいた時だった。
信号の反対側に自分と同じような装備の旅人が見える。
え?まさか日本一周か?
そのまさかだった。
近づいていき会釈をする。看板には「日本一周」という文字。
そこからはお互い興奮状態だ(笑)
初めて自転車で日本一周の方と出会いました!
その方は自分よりも半月ほど早く同じ大阪を出発した彼。すぐに意気投合し、開いていた鉄板焼きの店に入った。
旅人と一緒にご飯を食べるのは初めてだ。彼は旅の様子をYouTubeに投稿している。LINEのスタンプ作りまでできて、収益を得ているらしい。
すごいな…。働きながらの旅や。でも楽しそう^^
同じ自転車旅の方から刺激をもらい、今日の寝床へと走った。
酒田市までのルート
2022年 7月3日【51日目】
新潟県村上市→山形県村上市
走行距離 117.5km
積算距離 2,772.2km
今日のブログも読んでくださりありがとうございます。堤防でのご家族との出会い、そして日本一周勢との出会いがあった51日目でした。さて、旅は東北地方へと入ります。明日はどんな出会いがあるのか。次回もお楽しみに!