2か月間の留学に行くために日本一周を中断。さて大阪から飛び立ちますか!と思っていた時、思わぬ出来事が!そして人生初のヒッチハイクに挑戦!
それでは行ってみましょう!
NARITA
自転車日本一周旅は仙台で一旦終了。旅と並行して進めていたのが語学留学の準備である。留学先に選んだのはニュージーランドの隣の島国フィジーだ。なぜフィジーを留学先に選んだかは別のブログで。
おおかた準備は整い、出発の3日前に届いたEチケット(電子航空券)を確認した。大阪に住んでいるので当然関西空港から出発するものと勝手に思っていた。Eチケットの空港名には ’KANSAI’ と書いてあるはずである。
チケットを読む。
N? 空港名はNから始まっている。
おいおい成田やんけー!(笑)
チケットにははっきり ’NARITA’ と書いてあった。何ということだ。ただ幸い3日ある。行く手段はいくらでもあった。その時に頭に浮かんだのが旅中に出会ったヒッチハイカーのことだ。
気仙沼のスローハウスで出会った二人の旅人。楽しそうにヒッチハイクの思い出話を語っていた。滋賀の湖岸緑地で出会った旅人みさきくん。彼のヒッチハイクでの出会いの話もまたおもしろかった。
自分もいつかやってみたいな…。
なんとなくその「いつか」が今目の前に迎えに来ている気がした。その日のうちに100円ショップにスケッチブックを買いに行った。
ヒッチハイクの方法
出発地点やヒッチハイクのやり方、みなさんが気になりそうなことを少し解説します!
ヒッチハイクとは?
「行き先を書いたボードを掲げ乗せてもらう」なんとなくそんなイメージは持てる。メリットは基本的には無料で車に乗れるので移動費を節約できるという点。デメリットは人に頼らなければ移動できないという点だろう。いったいどういう流れで行うのか。いざ自分がやるとなると疑問点がいくつかわいてくる。
出発地点は? 行き先はどう書く? 車に乗ったらどう過ごす?
旅人から聞いた話によると「すばやく移動したいなら高速道路」「たくさん出会いたいなら下道」など期間や目的によって待機場所は変わるようだ。今回は2日間しかない。明日の夕方には空港に着かなければならないので高速を使って向かうことにした。
出発地点は?
ヒッチハイクで高速道路を使うには ①高速に近い場所でヒッチハイクをする ②サービスエリア(SA)に徒歩で入りヒッチハイクをする の二つの方法があった。①は初めての自分には難易度が高すぎる気がした。そこで大阪で徒歩で入れるヒッチハイクにおすすめのSAを調べてみた。すると出てきたのが吹田SAだった。ここのSAは通行量が多く、徒歩で上がれるという特徴がある。とりあえず出発地点は決まった。
行き先はどう書く?
まずは行き先を書く材料選び。海外ではグーサインで待機する方法があるようだが、初心者の自分にはきつい。よく見るのは段ボールに行き先を書く方法。段ボールは現地で手に入れやすく、使い終わった後は処分すれば荷物としてかさばらない。ただ今回は記念すべき初めてのヒッチハイク。書いた文字を記念に残して置けるようにしたい。そこで100円ショップのスケッチブックを使用することにした。
めざすは成田空港だが、もちろん大阪で「成田」と書いたところで車は止まってくれないだろう。次にある大きな町や「○○方面」と書いて車側の選択肢を広く持たせたいところ。今回はまず「名古屋方面」と書いてやってみることにした。
出発の日
出発の日、留学の荷物にスケッチブックと日本一周旅で使っていた看板を追加した。この看板をつけていると旅の気分が増す。
家族に見送られ電車に乗った。頭の中は留学よりもヒッチハイクのドキドキ感でいっぱい。
電車の中で一人のおばちゃんに声をかけられた。おはなしきくたびの看板を見てくださったようだ。事情を話すと「暑いけどヒッチハイク頑張ってね」と差し入れをいただいた。
JR岸辺駅に到着。ここから最初のヒッチハイク場所の吹田SAまで歩いて向かう。
吹田SA(上り)には地図上の南側の道から入ることができる。
進んでいくと右手に駐車場があるのでその中に入る。
奥にある高架のトンネルを進むとSAに徒歩で入ることができる。
無事到着。徒歩でSAに入ったのは生まれて初めて。目の前には多くの車が…。なんとなくもう後戻りできない気がした。
ヒッチハイクスタート
悪夢の2時間半
9:00 スケッチブックを手に持ち、ヒッチハイクする場所を考える。トイレの前がいいと聞いたが、うーん。人通りが多く恥ずかしい。そんなことを言っていてはヒッチハイクなんてできないのであるが。
あれ?
トイレ前に同じように行き先を書いたボードを持った方がいる。これからヒッチハイクをするようだ。見た感じは学生のよう。声をかけてみるとやはりそうだった。嬉しくなって一緒に写真を撮った。
彼は少し慣れた様子で行き先を掲げる。その様子を後ろから見る30歳。
なるほど、あんな感じか!
トイレから少し離れたSAの出口付近で荷物を置いた。
ここでやってみよう!
彼に刺激を受け、早速「名古屋方面」と書いたボードを掲げる。顔の高さに持っていくだけで手が震えた。
ついに始まる。
自転車旅で気仙沼に着いたのが2週間前。あのときヒッチハイカーに出会うまでは、自分からは遠いものだと感じていた。まさか2週間後、このようにボードを持って立っているとは(笑)
持ち方をいろいろ変えつつ30分が経過。うーん、止まる車は一台もない。自分の方をちらっと見ては目をそらしたり、目が合わないよう大きくよけていったりする車が多かった(後々考えるとこの時はメンタル的にネガティブにとらえていたのかも)。
くぅ、きつい…無理や。
開始30分でメンタルがやられ、ボードをおろして2、3歩後ろに下がった。
いやいや、がんばらないと!
やると決めてせっかくここまで来たのだ。先ほどとは少し場所を変えてやってみた。
「名古屋方面」というのが悪いのかも。
そういえばずっとこの言葉で掲げていたがいきなり「名古屋」という文字を見ると運転者も一歩引いてしまうのではと思った。紙を裏返し、「滋賀方面」に書き換えた。だがそこからさらに1時間。止まってくれる車はいなかった。ちらっと先ほどの学生の方を見る。彼も苦戦しているようだ。しかし次の瞬間、彼の前に車が止まった。
うわあ、まじか!
別に勝負をしていたわけではないが、なんだろうこの敗北感は(笑)
あかん、飯や飯!
お昼を食べに一旦SAの中へ。パンを買ったが味がしなかった。
今からバスをとって東京まで行こうか…。
スマホの画面上を指がうろうろ。そもそもこんな歳でヒッチハイクというのが無謀だったのか。気持ちはどんどんマイナスになっていく。
行き先を「京都滋賀方面」に変え、最後の挑戦。一緒に戦った彼の姿はもうない。人はたくさんいるが、急に訪れる孤独感。メンタル的にあと30分が限界かも。
その時だった。目の前に車が止まった。
「乗る?」
え、いいんですか?!
ヒッチハイクを始めてから2時間半。ついにこの瞬間が訪れた。優しそうなおじさんだ。まるで神様のように見えた。
ついに1台目
乗せてもらえることになったのは良かったが、流れがわからない。後ろの席か、それとも助手席に座るのか、車では何を話そうか…。
ヒッチハイカーは初めて乗せたというおじさん。京都に用事があるそうで、途中のPAまで乗せてもらえることになった。高ぶった気持ちを一旦落ち着かせ、これまでのことを話した。先ほどの吹田での格闘、自転車旅、なぜヒッチハイクをすることになったのかなど。話しやすい方で安心して乗っていられた。
ふぅ、これがヒッチハイクか。
先ほどまでずっと同じだった景色があっという間に過ぎていく。自転車旅では感じることがないスピードだ。
ありがとうございました!
お礼を伝えて車を降りる。京都の桂川PAというところで降ろしてもらった。
2台目
やったぞ!!
気持ちはまったく落ち着かず高ぶっている。20分ほど車に乗せてもらっただけなのに。先ほどまでの下がったメンタルがうそのように気持ちが晴れていく。とりあえず少し休憩だ。
トイレから出て、ボードを「滋賀方面」に書き換えた時だった。
「よかったら乗りますか?」
若いお姉さんだ。吹田での待機時間がうそのようにあっという間に車に乗り込んだ。
ヒッチハイカーをのせるのは初めてで、以前から乗せてみたいと思っていたそうだ。フィジーに行くために成田までヒッチハイクしていることを伝えると、この方も留学経験があるそうでいろいろと教えてもらえた。
滋賀の大津SAに到着。聞き上手ですてきな方だった。普段は自転車の旅なので、滋賀まで来ると結構進んできた気がする。ありがとうございました!
3台目
再びボードを掲げる。今度こそ「名古屋方面」だ。
「旅の話聞かせてくれる?」
30分ほどたったとき、カップルの方が声をかけてくださった。ボードよりも日本一周の看板が気になったようだった。USJに行った帰りでなんと名古屋まで行くそうだ。めちゃくちゃありがたい^^
車は高級車だった。
こんな車に旅人が乗ってもいいのだろうか。しかもカップル…。
少し躊躇したが優しく後部座席まで案内してくださった。
車の中ではこれまでの自転車旅について話した。聞き方に大人の余裕を感じる。
大津から約1時間半。距離は130㎞を越えていた。愛知に入りナガスパのPAに到着したが、ひと気が少ないのを見て次のPAをめざすことになった。ほんとに優しい方たちだ。
ナガスパを通り越し、苅谷PAというところで降ろしてもらった。ありがとうございました!
4台目
目標の静岡まではもう少し。しかし時刻はすでに17時を回っている。静岡と言っても広いので「浜松」と書いて待つことにした。立つ場所を変えながら約40分。車が止まった。
後部座席に案内され乗り込む。二人のおじさんで旅の話をたっぷり聞いてくださった。年齢とここまでの経過を伝えると「ぶっ飛んでるねえ!」という言葉をいただいた。たしかにネジが数十本抜けているかも(笑)
浜名湖SAに到着。なんと一日で静岡まで来ることができた。ありがとうございました!
時刻は19時。もう一台くらいいけるだろうか。思いをボードにのせ、ライトで照らしながら掲げてみる。
ところが止まってくれる車はなかった。さすがにここまでかと決め、徒歩で降りることにした。こういう時にSAが徒歩で降りられる場所なのかはとても大事だと感じた。
2日目スタート
昨日は浜松市内の快活で宿泊。歩いて最寄りのSAまで向かう。
三方原PAに到着。ここも徒歩で上がることができるPAだ。
5台目
7:30 早速2日目のヒッチハイクを始める。静岡は横に広い県だ。ボードにはとりあえず「静岡市」と書いた。今日の18:30には成田から飛行機が飛ぶ。本当に到着できるのだろうか。そろそろ1台目に乗らなければきつい…そう思っていた時だった。
9:00 「少しだけなら乗せられるけど…」と一人のおじさんが声をかけてくれた。
助かった…。
ヒッチハイカーを初めて乗せたというこの方は教員でアーチェリーをされているそう。試合会場に向かっている途中とのことだった。
掛川市の小笠PAというところまで乗せてくださった。ありがとうございました!
6台目
すぐに次のヒッチハイク。このまま順調に進みたいところ。再び「静岡市」のボードを掲げる。
20分ほどで今度は二人組の方が声をかけてくださった。車の後部座席に乗り込む。このお二人テレビ局に勤務されていて早朝のお仕事を終えて局に戻る途中だった。なんとありがたい^^
取材の苦労話や昔の旅の話を聞かせていただいた。今朝はドローンを使った撮影をしていたそうだ。一応勤務中ということで写真はNGだったが、二人とも親切な方で楽しいドライブだった。
静岡市の日本平SAに到着。ありがとうございました!
7台目
順調に2台の車に乗せていただいたが、距離はそこまで進んでいない。次で静岡を抜けないとさすがにやばい。だが静岡はまだ80㎞以上を残している。静岡が広いのもあるが、ドライバーさんの都合もあるので仕方がない。人の力に頼って進んでいくのは結構大変だ。
暑さも増してきた。日陰でボードを持つこともできたが、できるだけ見てもらいやすいところに立った。すると少しこわもての方が話しかけてくださった。
「あんまりしゃべらないけどいい?」
こんな感じで声をかけてくれる方もいるのかと思った。こんな見知らぬ旅人を乗せてくれるだけで本当にありがたい。
写真もちょっと…というこの方はたしかにあまり自分からはお話をされない方だった。もちろんそういう方もいる。
何か話題は…
せっかく乗せてもらったのだから、こっちから話を作って楽しんでもらいたいと思った。周りを観察する。大きな車の後部座席には荷物が積んである。ダッシュボードの上にはミニカーが一つ置いてあった。ミニカーの車種は三菱のデリカ。この車とまったく同じものだ。
デリカいいですね。お好きなんですか?
そう聞いてみると、愛車のことについていろいろと教えてくださった。長年デリカを愛用していること、愛車について語りたい人が集まるSNSがあることなどなど。中でもおもしろかったのはデリカ好きが自慢の愛車で集まるイベントがあることだ。その名はデリカファンミーティング。年に一度開かれていてなんと1200台ものデリカが集まるらしい。すごいイベントだ。
おもしろいですね!^^
いつの間にかその方の話に夢中になっていた。
1時間半後、神奈川の海老名SAに到着。距離にして130㎞。まさかこんなに長い距離を乗せてもらえるとは。言葉は良くないが、最初の印象からすると正直びっくり。後々考えるとこの方との出会いは特に大きかった。ありがとうございました!
8台目
14:00 時間的には以前厳しい状況。ボードに「東京」と書き、ヒッチハイクを始める。
30分ほどたったところでおじさんが声をかけてくださった。
「トラックやけどいい?」
ありがたい。ヒッチハイクでトラックに乗れるとは。実はヒッチハイカーの旅人からトラックのヒッチハイクの難しさを聞いていた。トラックは勤務中の方が運転しているケースが多い。その間に仮に事故でも起きればドライバーが責められることになる(もちろん他の車でも事故のリスクはある)。ただ時間的にもこの方に頼るしかなかった。
「お昼ご飯食べてからでもいいか?」
そういっておじさんは私をSAの中へ連れて行った。
「好きなの選び!」
なんとおじさんは私の分までお昼の弁当を買ってくださった。
乗せてくれるだけでもありがたいのに差し入れまで。東京駅付近まで乗せてくれるらしい。
トラックは中型だったが、普通車よりは断然幅が広く感じた。慣れた手つきでハンドル操作をしている。過去にも何度かヒッチハイカーを乗せたことがあるそうだ。
東京駅近くの路上で記念写真。
おじさんによると東京駅あたりから千葉の成田に向かう車を見つけるのは難しく、バスに乗ることをおすすめされた。たしかに時間的にも最後はバスに乗るのが確実だ。
到着
東京駅に到着。ついにここまで来た。八重洲口から出るとバスターミナルがある。東京駅から成田空港までは予約不要の全便自由席便バスが頻繁に出ている。運賃は片道1300円。1時間少しでターミナルに到着する。
16:30 無事成田空港のターミナルへ。国際線利用にもかかわらず、2時間前のぎりぎりの到着になってしまった。
空港で待っていた方がいた。広島のおてつたびで出会い、北海道でも再会したジムニーの旅人だ。なんと福島からわざわざお見送りに来てくれた。ありがたい。
彼とご飯を食べ、旅の話をした。手荷物検査ゲートでお別れ。
初めてのヒッチハイクを終えて
大阪から成田空港(結果的には東京駅)までのチャレンジで合計8台の車に乗せていただいた。この2日間は本当に刺激的だった。
きつかったのはお察しの通り待機時間。着いてすぐに次の車に乗せていただけたこともあったが、最初の吹田SAの2時間半は精神的に結構追い込まれた。何台もの車が自分の横を通っていき、周りからは視線を感じる。乗った車内でもなんとなく気が張った状態でエネルギーを使う。また、移動費はかからないというイメージだったが、その分食費や宿泊代がかさむことがわかった。大阪東京間なら夜行バスで3000円以下で行ける。一晩で一気に行けるところを2日間かけていくのだから当然だ。
出会うところから始まる旅
ただそれ以上に刺激的だったのは、驚きの出会いの数々だ。初めて乗せたという人、旅の話を聞きたいという人、話を聞いてもらいたいという人…。ヒッチハイク旅はまず人と出会うことから始まる。自転車なら自力で進めるが、ヒッチハイクは人に頼らなければ進めない。それに出会った瞬間個室に案内される特殊な旅。見知らぬ旅人を招き入れる側も勇気がいるだろう。
車の中で少しずつ関係を築かせてもらい、いつの間にかドライバーの方の話に夢中になっていたり、こちらの話を聞いて「そんな生き方もあるのか!」と驚いてもらえたりする。お別れの時に「ありがとうございました!」と伝えると、「こちらこそ楽しかったです!」と返してくれる方もいた。自分があのとき「ヒッチハイクをしよう!」と思っていなければ出会うことができなかった方々ばかりだ。
まさか自分がヒッチハイクをするとは
改めて人生は想像もしていなかったことが起きるものだなと。したことがないことに挑戦する楽しさを感じた。何かに挑戦するときに生まれる不安。体がまだ感じたことない世界に飛び込むのだから当然生まれる。そしてたいてい一つ目、二つ目あたりの山が高い。ただそれを乗り越えるとフラットな土地に抜けられる。
意外と自分できるのかも
挑戦すると必ず失敗はするし、エネルギーも使う。ただその繰り返しで新しい自分に出会えることもある。今回の体験談が何かのお役にたてれば幸いです。今後もいろんな挑戦やってみますね^^
ヒッチハイク体験談読んでくださりありがとうございました!このヒッチ旅で出会ったうちの何人かには無事空港に着いた連絡ができて、今でもつながっています。おもしろい出会いです^^