大阪入りまでは残り2県!しかし立ちはだかる大雪。果たして無事着けるのか。それでは行ってみましょう!
天下分け目の関が原
大垣市の快活を出発。まずまずの天気だが、恐れていた大寒波がついにやってきた。しばらくは雪の予報が続くので安全に進みたい。
関が原に向けて西へこぎ始める。気温は低いが雪は今のところ降っていない。
行けそうや!
少し安心した。ここからは慣れ親しんだ滋賀・京都ルート。第1弾でも第2弾でも通ったよく知っている道だ。行けるぞ。
ところがその希望は早々に散ることになる。関が原が近づくにつれ、景色が一変したのだ。
おい、雪…。
空からは雪がちらつき始めた。というかすでに積もっている。
徐々に上り坂になり始めた。関が原の坂はそれほどきつくはない。雪がないところを進めば行けるはず…。しかしここは天下分け目の関が原。そううまくはいかなかった。
これは、無理や…。
完全に雪が積もった区間に入った。さすがにこれでは自転車は滑って進めない。一人の先人の足跡がわずかに希望を持たせる。
車道を走るか?
道路側に出てみるが所々地面が凍っている。これではスリップした時に危ない。
歩くか…。
自転車から下りることにした。急な坂道以外で自転車を押して歩くことはめったにない。
先ほどまで見えていた足跡も途中からなくなってしまった。関が原を越えた滋賀側の町、米原まではまだ15㎞以上。このペースで歩くと3時間以上かかってしまうが仕方ない。
お話聞いてる場合ちゃうわ…。
動画の音声にはそんなつぶやきが入っていた。体全体が寒さに凍えていることは間違いないが、特に手足の冷えがすごい。くつはスニーカー、手袋は100円ショップで買ったものなので当然である。雪山に挑んでいるというのに装備がひどすぎる。
この山を越えたら…。
なぜかこの時、「山を越えれば雪道が終わる」という思考に陥っていた。滋賀に入ればこのつらさは終わる…。道路の幅がある場所は車道をゆっくり走り、そうでない場所は歩道を押して歩いた。
本当の峠はそれから
そうして2時間半。ようやく関ヶ原の峠を越えた。ほっとすると体中に再び寒さを感じるようになった。そしてある現実におののく。
うそやろ…(T T)
米原周辺は雪道が終わるどころか、さらに積もっていた。今日出発したことを心から後悔した。
きっちり計画しやんからこんなことに。
こういう時に責める相手は自分しかいない。頭を動かし、最善の策を考える。脳が寒さを感じる隙を与えないようにした。でもダメだ。手足が冷たい…いや痛い。
一度駅で止まって手足を見てみることにした。凍傷になっていたら大変だ。そっと手袋をとり、靴下を脱ぐ。手袋もくつも靴下もすべて濡れていた。ヘルメットも髪もすべて。
手足の先は赤くなっていたが感覚はあった。正直ほっとした。ここで一晩過ごしてみるか。
いや、結局状況は変わらないだろう。むしろ今すぐ冷えた体を温めなければ。手足は何度こすっても温まらなかった。
横を電車がゆっくり通り過ぎていく。
そういえば…
大垣市の快活CLUBの場所を調べた時にこの辺りにもピンが見えたはず。凍えた指でスマホを操作する。
やはりあった。ここからすぐ先のところだ。
よっしゃ、いこう!
ゆっくりと着実に進む。
遠くに見慣れたオレンジの看板が見えた。一瞬手足の冷たさを忘れる。
ついた。
オアシスに到着。冗談抜きで光り輝くオアシスに見えた。体の力が抜けた。
駐輪場に自転車をとめて心の中で感謝する。ここまで連れてきてくれた自転車に、そして神様に。
暖かいシャワーを浴び、服を洗濯した。赤い手足は徐々に通常の色を取り戻す。
個室のブースに入ってほっとすると同時に猛省した。一歩間違えていたら命が危なかった。自分は運が良かっただけなのだ。旅はまだ半分、ここまでどれだけ神様に救われたことだろう。
旅をするみなさんはどうか安全に。こんな日にこぐのは大バカ者です。
雪の滋賀を歩く
無事朝が来た。快活のマットと毛布にこれほど安心感を覚えた夜はなかった。天気を確認する。今日は雪が降らない予報で気温も昨日よりは少し上がる。
荷物の中に農作業用に持っていた長靴があった。なぜ昨日履かなかったんだろう(笑)
昨日と同じく車道を走る、歩道を歩くの繰り返し。ゆっくりと着実に。
中山道の石碑だ。江戸時代、現在の東京と京都を結んだ街道である。昔の人もこの季節はこうして寒さに凍えながら歩いたのだろうか。
田畑に積もる雪を見つめる。いつもなら一面の雪を見たら興奮して駆け回りたくなるが、正直もうお腹いっぱい。太陽が傾き始めていた。
一日かけて大津までやってくることができた。京都・大阪は目の前だ。
今日も快活で眠る。あぁ、これは間違いなく旅の峠。乗り切った。
おつかれさまでした。
大津市までのルート
168日目の彦根からのルートは計測し忘れました。
2023年1月27・28日【167・168日目】
岐阜県大垣市→滋賀県大津市
走行距離 98㎞
積算距離 8,630㎞
今思い返してもこれが間違いなく旅の峠でした。自転車旅の方がもしこれを見ているなら、雨や雪の日は無理せず休んでください。